成年後見制度の必要性と活用方法

成年後見制度とは、精神上の障がいなどにより判断能力が不十分な方々を支援する制度です。
年齢を重ねていくと、人間は多かれ少なかれ徐々に判断能力が低下していきます。
判断能力が低下すると病院との入院契約や施設への入居契約などの法律行為や財産管理が困難になってきたり、いわゆる悪徳商法の被害にあう可能性も増加します。
成年後見人はこのような方々に代わって(代理人として)契約などの法律行為や財産管理を行い、本人の権利を擁護してきます。

最近増えているのが銀行などの金融機関で預金を引き出す際に、判断能力が衰えてきて自分で窓口での手続を行うのが難しくなったので、ご家族が代わりに引き出そうとして断られるケースです。
金融機関は預金名義人が認知症などで自分で引き出しができなくなると預金口座を凍結してしまいます。
年金が振り込まれている預金などを引き出せなくなると、日常の生活に支障をきたすこともありえます。
このようなときに後見制度を活用して成年後見人を登録すれば、成年後見人による預金の引き出しが可能となります

成年後見制度には、既に判断能力が低下してしまっている方を援助する制度である法定後見制度と、判断能力があるうちに、将来の代理人を選任しておいて、 将来判断能力が不十分になった場合にどのような生活をしたいかということをあらかじめ決めておくことができる任意後見制度があります。

法定後見−裁判所に申立てをして成年後見人等を選任してもらいます

認知症や精神上の障がいなどにより、判断能力が不十分な方の場合、預貯金や不動産などの財産管理をしたり、介護施設入所や介護サービスを受けるための契約手続などがご自分ですることが難しくなってきます。また、肉親に相続が発生し遺産分割協議が必要になった場合にも協議することができずに相続手続が進まないこともあります。
最近は判断能力が衰えていることにつけこんで、不要なものを買わせる契約を結んだりする悪徳商法も増えており、そういった被害から守ることもできます。

法定後見制度には、後見、保佐、補助の3種類があり、判断能力の程度によって選択することになります。
家庭裁判所へ申し立てを行ってから成年後見人等が選任されるまでは3〜4ヶ月かかります。
申立のために必要な医師の診断書や戸籍謄本などもそろえる必要があり、準備期間も入れると選任までには半年近くかかると考えておく必要があります。

任意後見−自分の意思で将来の財産管理方法を選択することができます

まだ判断能力がしっかりとあるうちに、将来判断能力が低下したときに後見人になってもらう人を、自分の意思で決めておくことができます。
このような将来後見人になる約束をしておく人を任意後見受任者と呼びます。
ご本人と任意後見受任者との間で任意後見契約を結び、判断能力が低下したときにご家族や任意後見受任者が裁判所に任意後見監督人の選任申立てをして、後見監督人が選任されると後見事務が開始されます。
今のところ判断能力には問題はないが、足が弱ってしまったり体調が不良で金融機関等へ行くことができない場合には、任意後見契約と合わせて後見開始までの間の各種事務手続きも行えるような事務委任契約を別途結んでおけば、現在の生活の援助からスタートして任意後見への移行まで、その後の生活を安心して送ることができます。
身寄りのない方の場合には、上記の契約と合わせて死後事務委任契約を締結しておけば、亡くなった後の葬儀からお墓の管理、財産の処分などまでやってもらうこともできます。

任意後見契約は公正証書で作成する必要があります。
任意後見契約における代理権の中身などについては、将来どのような生活がしたいか、財産管理をどのようにしてもらいたいかなどを、任意後見受任者とよく話し合って決めていきます。契約内容については公証役場で事前に公証人と打合せを行うこともできます。
契約内容が決定したら任意後見契約を公正証書で締結します。

金融機関から後見人をつけないと預金の引き出しができないと言われた場合、遺産分割協議の必要がある場合など後見制度の利用の仕方、申立て方法に関すること、申立てのための戸籍収集など分からないことがございましたら、お電話 048(282)5122 、またはお問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。